路線バス探訪記

バスに乗って旅がしたい

琴参バス 美合線の思い出

香川県西部を走る琴参バスに『美合線』という路線が走っています。

金比羅宮のある琴平から南へ下り、徳島との県境に接するまんのう町とを結ぶローカル路線です。

カッコいい

 

 

大まかな時刻表がこちら

平日の朝に琴平へ。夕方にまんのう町方面へと向かう便が多数設定されており、通勤・通学需要の多い典型的なローカル路線だという事がなんとなーく読み取れます。


ちなみに土日は昼間の「三角」止め2往復だけが運行されます。終点の三角(みかど)近くに温泉や渓谷があるため、そこの訪問客用に設定されているものだと思います。

 

 

さて、何の変哲もなさそうな『美合線』ですが、不思議な時間帯に走っている便が1本ありますね。

 

いや、「下福家」もですけど...

こちら、「琴平営業所」6時03分発の「落合橋」行き。

こんな早朝から郊外向きの需要があるのか?送り込み回送ついでの運行?
などと思うのが一般的でしょう。一般...?

確かに限定的な需要があるのかもしれませんが、実はそれ以上に重要な役割を持つ便なのです。

 

答えを書く前に、先ほどの時刻表を見てみましょう。
朝から何台ものバスが琴平へ向けて出発しています。

そう、ここの運用に答えが隠されています。

 

まず、朝一の便から読み解いていきます。
左端から
「落合橋」6:31発、「川奥」6:36発はそれぞれ営業所から回送されてきます。

ここまでは良いでしょう。だが、『美合線』の恐ろしさはここから。

 

 

「川奥」6:36発のバスは琴平方面へと直通しているような表記ですが、実際には「落合橋」止めで運行されます。琴平方面に向かう人は別のバスへと乗り換えを強いられます。
その後、「川奥」から来たバスは15分程度待機をしたのち「落合橋」7時01分発として琴平方面へと走っていきます。


このとき、「落合橋」6時47分発として乗り換える相手のバスも営業所から回送されてきます。

現在分かってる状況↓(車両ごとに色を変えています

さあ、時刻表からは分からない難解な運用はまだまだ続きます。

 

続いて「川奥」7時06分発のバス。この便が鍵を握っているわけですが、それは最後に...

 

お次にようやく「琴平営業所」6時03分発の出番です。
「落合橋」に6時43分に着いたバスは○○○○○○してから「下福家」まで回送。そして「下福家」7時06分発として『『落合橋まで』』一旦、運行されます。

そして、「落合橋」には「川奥」7時06分発と「下福家」7時06分発が同時に到着します。
先ほどは乗り換えを行った「川奥」発ですが、今度はこちらが琴平方面へと直通。では「下福家」から来たバスはどうするのでしょう。

 

 

答えは、20分待機。
「落合橋」7時37分発までバス停前で休憩します。実は「下福家」の時点で既に「琴南小学校」の行先を表示しており、これに関しては現地で見るとすぐにわかります。時刻表上ではさっぱり分かりませんが...

 

ちなみに「落合橋」には交差点を挟んで2つのバス停が存在するわけですが、同じ琴平方面でも「川奥」からくる便と「下福家」「落合橋」始発の便とでバス停が異なります。

川奥発が使用する「落合橋」

(後ろのバスから前の「琴平」行きに乗り換え完了後の光景)

 

下福家・落合橋止めが使用する「落合橋」

(7時37分まで待機中の「琴南小学校」行)

 

そしてこれが結果です。

初見殺しだわ。


と、まあかなり複雑な動きをしていたわけですが、一台だけ営業所から回送されていないバスがありましたね。

 

「川奥」7時06分発の便です。
営業所からの回送でない...となれば、答えは一つですね。

そう、「落合橋」に駐在があります。

ちなみにこの箇所をGoogleMapで調べると『琴参バス駐車場』とバレバレな名称が付いています。

maps.app.goo.gl

 

なんだ、それだけか。そんな路線ならいくらでもあるわ。とお思いの皆様。
これだけではないんです。

 

 

GoogleMapのストリートビューを見て気づいた方もいるかもしれません。

早朝に琴平からやってくる一本を覚えていますでしょうか。「落合橋」に到着後、あることをします。


それは....

 

 


「落合橋」7時01分発の「乗務員を降ろ」して「下福家」へ向かうのです!!!!!

バスがいない時間帯にも関わらず自家用車がいないのはこれが理由です。


~~ここで回想~~

 

初めて「美合線」を訪れたのは6年前の10月31日。福岡を22時に出発して朝5時に琴平に着いた僕は初めて見る琴参バスをわくわくして待っていた。
その期待に応えるように、始発の「落合橋」行きにトップドア車が入っているのを見て感激した。その便がどのような役割を持っているかも知らず、ただ純粋に喜んだ。


その後、1日1本の「下福家」へ向かうと先ほどのトップドアが佇んでいるではないか。
ただでさえ平日の1本しか走らない路線で折角だからと声を掛けて撮らせてもらう。

福岡からこの路線を見に来たことを伝えると、「こんなとこまで!?」と驚きつつも親切に色々と教えて頂いた。

その際に、
『夕方の「下福家」行きはこのバスではなく「落合橋」に滞泊していた車両が来るよ。』
というような内容の話を聞き、へー山の中にバス置いて帰るんですねー。程度の感想しか抱かなかったのは後悔している。まさか、乗務員がバスでやってくるとは...

 

 

 

その夜・・・

明日の「下福家」これかい!!!


~~回想終わり~~

 

というわけで、「琴平営業所」6時03分発はなんと乗務員2名運行(嘘ではない)なのです。
が答えでした。

 

かつては駐在場所の隣にある民家の2階に泊まっていたということは聞いていますが、なぜ現在このような運行形態を取っているのかは謎です。
(乗った時に聞いたら教えてくれそうな雰囲気ですけど、もう自分は行けそうにないので)誰か謎を解き明かしてほしいです。

 


もしかしたら他にもこのような運行形態を行っているバス会社は存在するかもしれません。しかしながら他の乗客もいないであろう早朝6時から2人の乗務員だけを乗せて山道を走ってくる光景はぜひとも見ていただきたいものです。

 

平日の早朝しかみられない光景ではありますが、金毘羅宮の観光ついでに早起きして乗ってみてはいかがでしょう。
え?乗るの?マジ?みたいな顔を2人からされること間違いなし!